DTPデザインとWEBデザインの違いは反射光か透過光の違いですか?

デザイン

いえ、違いは反射光とか透過光でもなくUXデザインでした…

よく言われるDTPデザインとWEBデザインの違い。

画像の解像度? 
紙はサイズが決まっていて、WEBはスクロールさせれば無制限?
使えるフォントが違う?
などなど色々あります。

他の記事や専門的な解説がもちろんある中で、実は紙と画面の違いと言い換えることができるんじゃないかと思いました。
そして、紙と画面の違いってコトは、反射光か透過光の違いではないか?と気づいたのです。
この時点でタイトルを決めたのですが、結論はUXデザインだったという話です。

色空間でいうと、紙のデザインはCMYKが使われます。これはすなわちインクです。
WEBデザインはRGB色空間です。さらに深度(bit数)によって表現できる色が広がります。インクも特色といういろいろなインクを足していけば色空間は広がります。なのでどちらの色空間が優れているかというのは一概に言えません。

しかし、最終的に印刷物となるCMYK色空間は、インクが紙にのって、さらにそれに光が当たって跳ね返ってきた(反射光)ものが目に入ってきます。

対して、RGB色空間は発光体から何かを通過してきて私たちの目に入ってきます。

これはデザイン的な特性というよりは色表現の特性が全く違うということを意味しています。

それってただの色の話ですよね?

もちろん、写真の解像度が350dpiなくてはならない、と言った網点分解する際のルールや、紙なので物理的なサイズ(デザインする面積)が制限されていると言ったルールもあります。A4サイズを超えて、A4サイズをデザインすることは不可能です。なのでサイズも重要です。

かたや、WEBデザインは72dpiや、96dpiと言った画面の解像度を意識しないといけなかったというのは一昔前の話で、スマートフォンをはじめとする様々なディスプレイサイズに対応したり、Retinaディスプレイなどの登場で、72dpiや96dpiといった解像度はもはや意味がなくなったり、どんな画面でも対応できるようにレスポンシブデザインになったりと、めまぐるしく変わってきました。

そうなると、手に取る媒体が反射光か透過光という点は最終アウトプットに影響する重要な一つの要素になるでしょう。

例えば、DTPデザインでは、紙質によって色の出方が変わります。また同じ紙でもインクの量の微妙なブレで、最初に印刷した紙と、最後に印刷した紙ですでに微妙に変わっていたりします(もちろん大差が生じないように印刷会社さんは努力していますが)。折り方とかインクの特殊な表現などを含めれば、侮れない多彩な表現が可能です。紙以外の素材に印刷できる印刷機も増えてきました。

紙&インク故に明かりがないと見えません。その紙を照らす明かりによっても見え方が変わってしまうのです。紙はすごく有機的な存在で、その触感もデザインに影響してくるのです。

そうなるともうDTPデザインではなく、UXデザインに近くなってきますよね。このデザインは紙になるけどそれを見る人は、どんな光のもとで、どんな紙の肌触りを体験するのだろう?って感じです。

一方WEBに肌触りはないだろう、と思うでしょうか? 今やディスプレイの種類は星の数ほど増えました。本当に小さな液晶ディプレイから、PCの画面、大画面テレビ、さらに大型のサイネージなど、透過光の特性も、ディスプレイの種類によって全然違います。

暗い小さな画面でどんなにダイナミックな写真を見ても、その写真の臨場感は伝わりません。でも、真っ暗闇で薄暗いディスプレイで見る写真というのもアリなのです。なんでも「鮮やかぴっかり鮮明くっきりが良し」ではないのです。

もしかして、どちらとも行き着く先はUXデザイン?

ディスプレイの高解像度化、高精細化によって、ピクセルデータの解像度はDTP用にどんどん近づいていってます。なので、350dpiなのか、72dpiなのかはほとんと意味がないのです。DTPデザイナーの人が、WEB用に使うんだったら解像度はこれくらいあればいいだろうと言って、低解像度にわざわざする必要はほとんどないと言っていいでしょう。

もちろん印刷で最低350dpi欲しいというのはありますが、それは綺麗に写真を見せるための条件であって、ルールではありません。ルールというのは、入稿用データにRGBデータが混じってたりするとダメですよね。これはルールなのできちんと守りましょうというようなコトです。WEB用画像にCMYKのJPEG画像を入れようとすることもまた同じです。

昔はWEBサイトはデスクに座ってPCで見るもの、という前提で作られていたので、デスクトップ体験がデザインの最重要課題でした。しかし、前述の通り、デバイスの種類は増えて、ディスプレイサイズもバラバラとなった今は、画面デザインではなく、UI・UXデザインが最重要課題となっているのはご存知の通りかと思います。

ちなみにこれは動画にも言えることです(さらに時間軸がくっついて厄介ですが)。

紙も画面も、反射光も透過光もいろいろ突き詰めると、UXデザインに行き着いていしまったのです。なので、DTPデザイナーとか、WEBデザイナーとかを分けるのは、もはやあまり意味がないかもしれません。

「私は紙を通したUXデザインは得意です。」とか、「私はスマホの画面を通したUXデザインが得意です。」と言ったスキルが意味を持つのでしょう。

データ上の色空間と、それぞれに決まったルールはもちろんありますが、重要なのはそのデザインが、どうやって人と接し、そこから何を体験するのか?ということなのです。

ルールは覚えればいいですが、デザインを通して体験できるコトはルール化できませんし、ましてやデザインを何を通して見るのか?が多様になった今、デザイナーの力が本当の意味で試されるわけです。

さらにそのデザインを受け取った側は情報も受け取ります。最高の情報を最高のデザインで体験してもらう。
これからのデザインはそういうコトなんでしょうね。

DTPデザインもWEBデザインも、行き着く先はUXデザインでした(反射光透過光関係ない…)。

追記
あ、やばい、電卓とかゲームウォッチの液晶画面は、反射型液晶で光が当たらないと見えないディスプレイでした。
なので画面=透過光では必ずしもないのですね。

そう考えるとゲームウォッチの画面から醸し出されるあの体験はまさに最高のUXデザインだったのかもしれません。
ゲームウォッチを知らないっていう人もいると思うのでググってくださいませ。

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